人の医療技術の進歩と広範囲の治療法は、最初から人間への効果が得られたのではありません。始めは「動物実験」という係わり合いから生じたのです。人間に寄与した医学の進歩の影に、彼らの犠牲が限局された科学的進歩の美名に封じ込めてしまった歴史的背景を再考する時がまいりました。
今後ともその犠牲は避けられなくとも、あくまで動物愛護の精神から離脱してはならいことは自明の理です。歯科医師と医師の医療法の進歩に実験的医療と、獣医師の愛護精神との相反は避けられないとしても、その両方のバランスの維持は今後の課題ではないのでしょうか。獣医師の本学会への賛同により、安直な動物実験にブレーキを掛け、歯科医師と医師が掲げる生命尊重の理念を動物側にも還元することを目標としております。
今や家族の一員となった動物に、人間がすでに獲得している医療術を動物に付与することは、生命を有する物への愛護精神の遂行です。本学会は、従来の医学・歯学・獣医学・薬学といった垣根を取り払い、各分野の医療人が専門性を生かしつつ、広義の生命体幸福に協働する姿勢を貫きます。
獣医師は、各種生物に携わり標榜科目の少ない理由から、歯科医師や医師以上にスペシャリストであると同時に、ジェネラリストも要求される医療業であることは周知の事実です。本学会は「獣医歯科学」や「人獣共通感染症」等について共同研究を行って、歯科医師・医師が獣医学を学ぶことにより動物発の感染症に対応できる利益を生みます。
獣医師側では、獣医歯科学において口腔外科学や口腔ケア・補綴学、さらにインプラント応用への取り組みが予定されています。獣医師が歯科学を学ぶことにより、日本において確立されていない獣医歯科学の発展に貢献いたします。