本学会における医師、歯科医師そして獣医師の役割

 本学会の趣旨であります医師と歯科医師とが連携を取り合って、それぞれの専門知識を相互に交換し合い研鑽すれば、患者さんにより有益な治療を施せることは今や医療界においても一般世間においても常識の域に達しつつあります。例えば難病と言われている糖尿病と歯周病が、それぞれの専門性を発揮することで有効な治療法が確立し、医療界にも患者さんにも明るい兆しが見えていることは一般市民も周知の事実です。

 その他口腔領域の疾病で、口腔内における細菌感染で誤嚥性肺炎を併発することが知られています。この炎症に対しては、医師はその起炎菌に対する知識は十分であり、治療は医科領域での治療となります。しかし、その前に誤嚥性肺炎の発症に対して、歯科医師が口腔医療の専門性を発揮すれば阻止できるのです。このようにして、幾許かの医科部門の疾病は歯科医療の知識を利用・応用すれば、極少に留められることは高い予知性を伴って確知し得ます。

 上述の通り医師の専門分野での疾患と知識に関して、歯科医師とお互いが理解を示し協調して医療を施す姿勢は、今日よく唱えられている「全人間的治療」の観点からも将来的に欠くべからざる医療のスタイルではないのでしょうか。これは本学会の命題で、その理念遂行に向けて邁進しております。

 さて、本学会は獣医師の参加を予定しております。近年のペットブームから動物に対する愛情は家族と同一であります。特定の年齢域の子供の総数よりも、ペットの総数の方が多いこともこの事実を裏付けています。また人間と同様の疾病に罹患している現状が認められています。そしてペットも食生活の変化から、口腔領域の疾患が増加しています。歯科の齲蝕や歯周病さらには口腔外科の治療を、歯科医師の助言の元で履修できたとしたならば、獣医師の技量の増進に寄与できると考えております。

 本学会設立に立ちはだかる大きな問題は、医師と歯科医師の間に、さらに獣医師とタイアップするに際しての諸法律の壁です。また目に見えない壁として、医師法・獣医師法のほか、医療関係者同士の軋轢を緩和させる使命も担っています。新設の学会組織の黎明期において新しい理念の吸収を妨げる未熟な集団の困惑など、これら諸問題の解決なくしては、日本総合口腔医療学会は既存の学会と酷似したままで進歩はありません。新たな理念に基づき、そして医療界の進歩に貢献することを医療人の誇りとする日本総合口腔医療学会は、切磋琢磨を続けてまいります。